伊勢湾におけるプラスチックごみ
四日市大学千葉研究室による研究によると、名古屋市で流出したプラスチックごみは、庄内川・新川などを通じて伊勢湾に流れ込みます。
下の図は、平成30年7月豪雨時の伊勢湾に河川から流入するごみの動きをシュミレーションしたものです。名古屋市を通る河川から流入したごみは水色の部分に含まれますが、約2日後には伊勢湾の入口にある答志島にまで達し、その約半数は伊勢湾外にも流出していきます。答志島は漁業が盛んなところで、プラスチックごみが海苔の養殖などに被害を与えています。島の北部にある奈佐の浜には多くのごみが漂着し、驚くほど大量のマイクロプラスチックも見つかっています。私たちの生活を便利にしているプラスチックが遠く離れた場所にも影響を与えてしまっているのです。
出典:名古屋市プラスチック削減方針
また、藤前干潟にほど近い庄内川・新川河口に漂着したペットボトルの年代調査を実施したところ、右のグラフのように10年ほど前に製造されたものが最も多く、古いものが残り続けてしまっていることが分かりました。最近製造されたペットボトルが少ない理由の一つとして、ペットボトルの回収率向上が考えられます。回収率が向上し、海へ流出する数を減らすことができるならば、他のプラスチック類についても管理を徹底することができるはずです。プラスチックと共存しながら海洋プラスチックごみを減らすことが私たちに求められており、それは日常からの意識と適切な行動が必要です。
出典:名古屋市プラスチック削減方針
【四日市大学 環境情報学部 教授 千葉賢氏からのコメント】
マイクロプラスチックの生態系や人間の健康への影響については、まだよく分かっておらず、世界中で研究が続けられています。生物が作る有機物などの物質の大半は、速やかに分解して、循環して、次の世代に受け継がれていきます。その分解と循環が生態系の持続に関係しています。
プラスチックは大変便利な物質ですが、分解されにくいため、環境に放出されると、
生態系の通常の物質循環の流れに乗らず、異物として長時間にわたり存在し続けます。毒性が仮に弱くても、物理的に生物の生息環境を圧迫したり、悪化させたりする他、誤食誤飲で生物体内に取り込まれると、消化器官での栄養の吸収を妨げたりします。
千葉研究室では学生と一緒に、伊勢湾の海岸、海面、底泥、そして魚介類の体内のマイクロプラスチックの調査研究を進めていますが、汚染は相当進んでいるという実感です。特に1㎜以下の小さなマイクロプラスチックの個数が極端に多いことが次第に分かって来ました。プラスチックを発明し、それを大量生産して利用してきた人類は、その処理についても責任を持つべきではないでしょうか。海洋生物を守るためにも、また、持続可能な人類社会を実現するためにも、プラスチックの適切な処理を推進すべきと思います。
伊勢湾におけるプラスチックごみに関しては以上です。
vol.9では名古屋市のごみ処理における状況を取り上げます。
引用元:名古屋市プラスチック削減方針~そのプラスチックは必要ですか?~